INTEGRATED REPORT 2020

トップメッセージ

代表取締役社長

ごあいさつ

株主の皆様には益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。

政府が成長戦略に盛り込む第4次産業革命では、車や家電など全てのものがインターネットに接続され、ビッグデータをIoT技術によって保持・収集する能力、それらをAIやブロックチェーンによって管理・分析する能力の重要性が増しています。当社が注力するCyber-Physical System(CPS)(実世界とサイバー空間の相互連携)/IoTの市場規模*は、2030年には世界で404.4兆円、日本で19.7兆円まで成長することが見込まれています。また、日本国内で成長率の著しい分野として、「農業」が年平均20.2%の伸び率となっています。なお、第5世代移動通信システム(以下5G)は、4Gを上回る高速化を実現するとともに多数同時接続、超低遅延といった特徴を持ち、2020年春から商用サービスが開始されています。

当社グループでは、こうした未来を見据えて、技術開発力に裏打ちされたデバイス製品だけではなく、サーバーや管理システム、さらにはエンドユーザーに対するアプリケーションをワンストップで提供することにより、注力するIoT市場全体をカバーすることで、高い収益性を維持し、また会社財産の安定性を確保した経営を目指しております。そして、株式会社ネクス、株式会社チチカカ、株式会社イーフロンティア、株式会社ケア・ダイナミクスをはじめとするグループ会社相互のグループシナジーの向上、組織再編や取引先口座共有による営業力の強化、事業収益性の強化を図ってまいります。

さらに、新たな取り組みとして、農業事業、ロボット事業など、今後の成長が期待される分野と当社グループの持つ技術資産を融合させた新サービスを創造してまいります。

* 一般社団法人電子情報技術産業協会「注目分野に関する動向調査2017」

2019年度の業績について

2019年度(2018年12月1日から2019年11月30日)の当社連結決算では、株式会社ネクスは小売業界向けの大型案件の受注が決まったことと、2019年度米国国防権限法の成立による切替需要の増加により、売上・利益ともに大きく増加しました。また、インターネット旅行事業は、ゴールデンウィーク10連休が良い影響を及ぼし、大幅な売上増加となりました。一方で、株式会社チチカカでは、2019年7月の天候不順やキャッシュ・フロー改善を目的とした仕入額の見直しによる在庫の圧縮を実施したことにより売上・利益ともに減少しました。株式会社イーフロンティアは、前年度において暗号資産向けのAIトレーディングシステムの運用の実績により売上と営業利益を計上しておりましたが、今年度はリスクを抑え小さな利ザヤを積み上げる運用を行っており、売上・利益ともに前年度を大きく下回る結果となりました。

以上により、売上高は9,670百万円(対前年度比13.1%減)、営業損失は633百万円(前年度は営業利益419百万円)、経常損失は678百万円(前年度は経常損失47百万円)、税金等調整前当期純損失は1,218百万円(前年度は税金等調整前当期純損失265百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,272百万円(前年度は親会社株主に帰属する当期純損失473百万円)となりました。

連結業績の推移画像

IoT関連事業

株式会社ネクスは、「IoT×ブロックチェーン技術」「IoT×AI技術」など、「IoT×新技術」を活用した新たなサービスの提供を目指しています。大量のデータを判別・収集するAI学習の「目」となる画像認識分野では、NVIDIA Corporationが提供するGPUを利用したリアルタイム画像認識技術の開発を行っています。画像認識に関する研究開発については前年度より本格的に開始しており、自社の農業ICT事業において、トマトの画像と糖度を学習させることで糖度計を使用せずに非接触でトマトの糖度を識別する仕組みや、圃場の中に収穫期を迎えたトマトがどこにあるかの検知、最終的には自動収穫を行うロボットの開発を行う予定です。既存製品については、2019年度米国国防権限法(NDAA2019)の成立に伴った切替需要が増加しています。

株式会社ケア・ダイナミクスは、「総合介護事業支援企業」として、介護事業者向けASPシステム提供のほか、介護ロボットの導入支援や介護ICTの提供などのサービスを展開しています。介護送迎車用のOBDⅡソリューション「ドライブケア」の見学会の継続開催、介護施設の電気代削減のサポート、節水システム紹介、法人向けネットワーク構築サポート、睡眠管理システムの販売などに取り組んでいます。また、新たに株式会社SmartHRと顧客紹介契約を締結し、同社が提供するクラウド人事・労務ソフトの紹介も開始しています。

株式会社イーフロンティアでは、OWC社(Other World Computing, Inc.)と日本国内総代理店契約を締結し、日本国内向けにThunderbolt 3*1製品やeGPU*2などのコンピュータ周辺機器の販売および付帯サービスを行っており、新ブランド「Akitio」を含め、従前のAmazon.comをはじめ、Yahoo!ショッピング、楽天市場にて販売を開始しています。また、自社開発ゲームのAI麻雀、AI将棋、AI囲碁を販売しており、2018年末に株式会社スクウェア・エニックスの運営する大手オンラインゲーム「ファイナルファンタジーXIV」の「ドマ式麻雀」ゲームの基幹エンジンとして「AI麻雀」プログラムの提供を行うなど、引き続き顧客獲得の拡大を目指しています。

農業ICT事業(NCXX FARM)では、農作物の生産、加工、販売を行う「6次産業化事業」と、特許農法による「化学的土壌マネジメント」+ICTシステムによる「デジタル管理」のパッケージ販売を行う「フランチャイズ事業」の事業化を推進しています。野菜の生長に必要な要素と健康管理に必要な要素を複合的に組み合わせて環境管理を自動的に行う「環境管理予測システムNCXX FARM」を導入し、制御の効果について引き続き検証を行っています。また、ミニトマトに比べて総収穫量は少ないものの、収量が安定し利益率も高い「GOLDEN BERRY(食用ほおずき)」用のフランチャイズシステムを商品化し、販売を開始します。

これらにより、当連結会計年度の売上高は1,243百万円(対前年度比30.8%増)、営業利益は115百万円(対前年度比137.6%増)となりました。

インターネット旅行事業

インターネット旅行事業のイー・旅ネット・ドット・コム株式会社およびその子会社では、インターネットによるオーダーメイド旅行の見積りサービスに特化し、見積り依頼のチャット対応やAIコンシェルジュ対応などユーザビリティの向上を図るとともに、見積り依頼の獲得に向けた業務提携を強化しました。

株式会社グロリアツアーズでは、2020年の東京パラリンピックの開催に向け国内外の大会のサポートの需要が増えました。また、パラスポーツ選手・人材をキャスティングするサービスやパラアスリートによる講演会・体験会など企画運営サービスを開始しました。今後も様々な障がい者スポーツのマーケットにさらに力を入れてまいります。

株式会社ウェブトラベルでは、トラベルコンシェルジュ事業を柱に、さらに魅力あるサービスにすべく取り組んだコンシェルジュのレベルアップ、スピードアップ、サポート体制の強化などにより、受注率のアップやリピーター獲得に効果が出ています。また、2018年2月より進めてまいりましたセゾンカードおよびUCカード(株式会社クレディセゾン)との業務提携は順調に伸びており、今後は新たなマーケット開拓を実施し、さらなる関係強化を構築する予定です。

売上高は、ゴールデンウィーク10連休の好影響や消費税率引き上げ前の駆け込み需要等により、創業以来初めて20億円の大台に乗り、当連結会計年度の売上高は2,632百万円(対前年度比11.2%増)、営業損失は13百万円(前年度は営業利益38百万円)となりました。

ブランドリテールプラットフォーム事業

株式会社チチカカは前年度に引き続き、不採算店舗の閉店や人員体制の見直しなどによる構造改革を進めました。仕入と売上のバランスの再構築を行い、2018年10月期の営業キャッシュ・フロー△378百万円に対し、2019年10月期は△16百万円と大幅な改善効果が出ています。また、2019年9月には本社オフィスを東京日本橋の馬喰町に移転し、グループアパレル会社とのシナジー効果の実現、取引業者との物理的距離を近くすることによる商品情報の早期取得、首都圏の優秀な人材確保など、様々な面で効果が表れつつあります。

新しい取り組みとしては、梅田阪急への催事出店、トヨタグループのサンクスセールへの出店等を行いました。海外仕入先企業との支払サイト見直し交渉によるキャッシュ・フローをさらに改善する取り組み、海外仕入先と商品別納期契約書を締結することによる納期遅延防止の取り組みも開始しております。

これらにより、当連結会計年度の売上高は5,776百万円(対前年度比10.4%減)、営業損失は423百万円(前年度は営業損失460百万円)となりました。

仮想通貨・ブロックチェーン事業

株式会社イーフロンティアは、引き続きAI技術を利用した暗号資産のトレーディングシステムの開発を継続しています。今後は、提携する株式会社フィスコ仮想通貨取引所、フィスコ仮想通貨取引所が運営を引きついだZaifの取引データを蓄積・学習することで、より精緻なAI技術を利用した暗号資産のトレーディングシステムの開発を進め、暗号資産市場の動向を踏まえた資金効率を意識した運用を可能とするシステムを目指します。

これらにより、当連結会計年度の売上高は9百万円(対前年度比99.3%減)、営業損失は16百万円(前年度は営業利益1,320百万円)となりました。

2020年度の見通しについて

第4次産業革命では、車や家電など全てのものがインターネットに接続され、そのビッグデータの高度な解析が可能になるのに加え、AIやブロックチェーンの発展により、現在よりはるかに効率化・省力化された未来が予測されています。こうした未来を見据えて、当社グループでは様々な取り組みを強化していく方針です。

具体的には、自動車テレマティクスをはじめとするIoT関連サービスの拡充、「IoT×ブロックチェーン技術」「IoT×AI技術」など、「IoT×新技術」を活用した新たなサービスの提供に取り組みます。また、デバイス事業で培った技術資産を活かすことで、効率的に新たな技術の習得と活用を行うとともに、グループ会社や業務提携先を通してサービスインに向けたテストマーケティングを実施し、高付加価値なサービスを早期に市場へ導入する方針です。

株式会社ネクスグループ
代表取締役社長
秋山 司