ごあいさつ
株主の皆様には益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。
政府が成長戦略に盛り込む第4次産業革命では、車や家電など全てのものがインターネットに接続され、ビッグデータをIoT技術によって保持・収集する能力、それらをAIやブロックチェーンによって管理・分析する能力の重要性が増しています。当社が注力するCyber-Physical System(CPS)(実世界とサイバー空間の相互連携)/IoTの市場規模*は、2030年には世界で404.4兆円、日本で19.7兆円まで成長することが見込まれています。
当社では、こうした未来を見据えて、2018年1月に株式会社フィスコ仮想通貨取引所と当社子会社の株式会社イーフロンティアが行う仮想通貨向けのAIトレーディングシステム開発にあたり、業務提携契約を締結しました。また同時に、持分法適用会社であった株式会社ネクス・ソリューションズが同じく持分法適用会社であった株式会社カイカの完全子会社となったことにより、業務の効率化・シナジーを拡大し、連結収益力の強化および連結企業価値の向上を図ります。また、2018年10月にカイカが持分法適用会社から除外されましたが、今後も資本業務提携契約自体には変更なく、引き続きフィンテック事業領域における新たなサービス開発に向けた取り組みを行ってまいります。
* 一般社団法人 電子情報技術産業協会の調査発表
2018年度の業績について
2018年度(2017年12月1日から2018年11月30日)の当社連結決算では、イーフロンティアが開発中のソフトの実証試験をかねたビットコインに対する投資により大きな成果をあげました。一方、ネクス・ソリューションズが持分法適用の範囲から除外となり売り上げが減少した結果、売上高は、11,125百万円(前年度比8.8%減)となりました。
また、株式会社チチカカの販管費の増加や原価率の上昇により、419百万円の営業利益(前年度は914百万円の営業損失)、47百万円の経常損失(前年度は940百万円の経常損失)となりました。株式譲渡による特別利益を計上しましたが「CoSTUME NATIONAL」のトレードマークを減損したことで、税金等調整前当期純損失は265百万円(前年度は1,024百万円の税金等調整前当期純利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は473百万円(前年度は902百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
ICT・IoT・デバイス事業(ネクス)
2016年8月に、ネクスはネクス・ソリューションズと共同で、介護施設をはじめとする様々な送迎業務を行う事業者向けの送迎車用OBDⅡソリューションとして、安全運転支援サービス「Drive CARE」(http://www.care-dynamics.jp/obd2/)の販売を開始しました。このシステムにより、同時に運行される複数の車両の危険運転(急発進、急停車、急ハンドル)を把握でき、管理者や指導者が運転手の運転の特性の把握と個々に応じた適切な指導を行うことができます。
株式会社ケア・ダイナミクスでは、OBDⅡソリューション「Drive CARE」の導入先施設での見学会を継続開催し、無料トライアルを行っています。また、介護ロボットの導入支援や介護ICTの提供などのサービスを開始し「総合介護事業支援企業」へと進化しました。
2018年8月に米国で成立した米国防権限法(NDAA2019)により、華為技術(ファーウェイ)など中国企業5社への締め付けが大幅に強化されたことにより、NDAA2019に抵触する製品の有無に関する多数の問い合わせを受けています。ネクスでは、すべての製品においてNDAA2019に関わる中国企業5社への製造委託や部品の採用を行っておらず、引き続き本禁止事項に抵触することがないよう、管理の強化をしています。
このセグメントの2018年度の売上高は950百万円(前年度比76.3%減)、営業利益は48百万円(前年度は465百万円の営業損失)となりました。
インターネット旅行事業
多様化・高度化する消費者ニーズに対応した商品を提供するイー・旅ネット・ドット・コム株式会社は、日本で唯一のインターネットによるオーダーメイド旅行会社としての満足度の高い評価をいただいています。また、イー・旅ネット・ドット・コムの100%子会社である株式会社ウェブトラベルでは、経験豊富な「トラベルコンシェルジュ」(旅行コンサルタント)がオーダーメイド旅行をサポートするサービスが好評を博しています。
2018年2月より進めてまいりましたセゾンUCカードとの業務提携は、カードそのものの機能として位置づけした「トラベルコンシェルジュ」に関する業務提携となっており、見積依頼件数や受注率の向上に貢献しています。
一方で、2018年度末に前年比8.7%増の3,119万人となった訪日外国人旅行者向けコンテンツの充実を図るべく、グループ会社である老舗出版社の株式会社実業之日本社の協力を得て、インバウンド向けコンテンツの中から英語のスキー専用サイトを新設するなどコンテンツの充実を図っています。また、2016年10月に子会社化した株式会社グロリアツアーズは、パラリンピック選手派遣や障がい者国際大会を専門に取り扱い、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて障がい者スポーツのマーケットの拡大に注力しています。
これらにより、当セグメントの2018年度の売上高は2,367百万円(前年度比8.4%増)、営業利益は38百万円(前年度は2百万円の営業損失)となりました。
ブランドリテールプラットフォーム事業
チチカカは、前年度に引き続き、不採算店舗の閉店や人員体制の見直しなどによる構造改革を進めています。EC事業においては、前年度の6店舗体制から新たに2店舗出店し、計8店舗体制になっています。
また、女優の広瀬アリスさんとのコラボレーションとして、公益社団法人日本青年会議所愛知ブロック協議会主催「愛知ブロック大会田原大会」に出店し、コラボレーションTシャツやトートバッグを販売し、1枚購入につき500円を社会貢献団体へ寄付しました。
2018年2月にアパレルブランドである株式会社シーズメンの第三者割当増資の一部を引き受け、資本業務提携を行いました。
これらにより、当セグメントの2018年度の売上高は6,445百万円(前年度比8.7%増)、営業損失は460百万円(前年度は71百万円の営業損失)となりました。
仮想通貨・ブロックチェーン事業
イーフロンティアでは、開発中の仮想通貨向けのAIトレーディングシステムをベースとした運用を進めており、リスクコントロールと資金効率を意識したトレーディングで大きな成果を上げています。
2018年7月に、当社本社がある岩手県花巻市において、仮想通貨のマイニング(採掘)事業を開始することを決議しました。マイニングには高性能なコンピューターを使った大量の計算が必要なため、発熱を抑えるための冷却ファンや空調設備などが必要となります。岩手県花巻市は寒冷地のため、1年を通してその大部分を自然換気による冷却に頼ることで電気代の大幅な低減が見込めます。さらに、マイニング機器から排出される熱を、当社の農業ICT事業「NCXX FARM(ネクスファーム)」へ活用していきます。
これらにより、当セグメントの2018年度の売上高は1,326百万円、営業利益は1,320百万円となりました。
2019年度の見通しについて
第4次産業革命では、車や家電などすべてのものがインターネットに接続され、そのビッグデータの高度な解析が可能になるのに加え、AIやブロックチェーンの発展により、現在よりはるかに効率化・省力化された未来が予測されています。こうした未来を見据えて、フィンテック関連ビジネスを戦略的注力領域に掲げ、特に重要な要因としてブロックチェーン技術に注目し、様々な取り組みを強化していく方針です。
今年度より持分法適用会社から除外されたカイカとネクス・ソリューションズとは引き続き連携を行い、「仮想通貨・ブロックチェーン事業」での早期のサービス提供を目指します。また、AI技術を利用した仮想通貨のトレーディングシステムの開発と、同システムを利用した仮想通貨や各種トークンへの投資を行ってまいります。さらに、新たな取り組みとして仮想通貨のマイニング事業を試験的にスタートさせ、ノウハウの蓄積と早期の事業化を目指します。
引き続き、loT関連サービスの拡充、loTとブロックチェーン技術を融合させたサービス、仮想通貨関連サービス、ネクスコインをはじめとするグループ企業が発行する各種トークンに関連するサービスの実施など、注目される成長分野へ積極的に参入する方針です。
株式会社ネクスグループ
代表取締役社長
秋山 司